2020年2月27日木曜日

セミナー『台湾の日式建築を訪ねて』 ③日式建築の意義


2020221日金曜日投稿「セミナー『台湾の日式建築を訪ねて』日式建築とは」
から続く。)

昨今台湾では各地で日式建築が再生され、新たな観光スポット等として脚光を浴びています。台北では松山煙草工場が「松山文創園區」として生まれ変わり、台中の「宮原眼科」、台南の「林百貨店」はそれぞれの市を代表する観光スポットとなっています。

日本人は懐かしい気持ちでこれを見、明治から第二次世界大戦敗戦までに建築されたものが今に至るまで保存されていることに意義を感じます。いわば、時空を超えて存在している建築物自体に意義を見出しているのではないでしょうか。

一方で台湾の人々が熱心に日式建築を再生保存する背景には、彼らが別の意義を感じている事実があると渡邉先生は指摘されます。

その例として、渡邉先生は基隆高級中学宿舎についてお話されました。

基隆高級中学宿舎の正式名称は「基隆官廳舍遺址―基隆中學校奏任官舍」らしいです。基隆に残された奏任官の宿舎はこちらのみで、奏任官とは明治時代の官吏で高等官の一つ、今で言えば省庁の課長ぐらいに相応するようです。

基隆高級中学の盧先生という方は、荒れ放題になっていたこの宿舎を教育の場として使っていきたいと考え、渡邉先生を呼んでこの宿舎を見てもらったり、生徒たちと荒れ放題になっている建物を掃除したり、庭の草むしりをしたり、色々と保存に向けて情熱をもって様々な行動を起こされました。

そして201911月には美しくなった宿舎にて座談会が開催されました。

(出典:「基隆官廳舍遺址―基隆中學校奏任官舍」のフェイスブック)

渡邉先生もこの座談会に出席されたのですが、建築物についてお話されたのは渡邉先生ご自身だけで、他のスピーカーの方々は、228事件当時にこの建物がどのような役割を果たしたか、この建物の付近で昔何があったか等の話ばかりで、建物自体の話は誰もされなかったらしいです。

台湾の人たちにとって日式建築とは「触媒としての建築物」であるというのは渡邉先生の言葉です。日式建築は地域の人々の記憶や歴史という無形で価値有るものの中に、有形で象徴的なものとして佇んでいるのでしょう。

「基隆官廳舍遺址―基隆中學校奏任官舍」のフェイスブックのページ(https://www.facebook.com/%E5%9F%BA%E9%9A%86%E5%AE%98%E5%BB%B3%E8%88%8D%E9%81%BA%E5%9D%80-%E5%9F%BA%E9%9A%86%E4%B8%AD%E5%AD%B8%E6%A0%A1%E5%A5%8F%E4%BB%BB%E5%AE%98%E8%88%8D-385862512175111/)を拝読していると、恐らく盧先生が書いたと思われる文章を見つけました。

文創是城市再生的推手!
但,城市若缺乏對歷史文化等精神價的認識及理解,就好像教育若完全由市場機制主導,那就是補習班化,只有授業而沒有傳道;宗教若商品化,買賣"",那根本就是褻瀆,只有物質而喪失了宗教講究神性丶勸人為善之道。文化產業最主要的特徵,是對「精神」的高度訴求,如何開始呢?
可先從認識歷史,感知故事,觸動同理神入,才能再更積極、精確地去了解、掌握人們渴望的價與感受,接下來的事業,需要引入或善用此文化元素,才能造就魅力十足的「文化創意產業」。

(以下拙訳)
文化・創造は都市再生の大きな担い手である!
もし都市が歴史や文化等の精神的な価値に対して理解を欠くならば、教育は市場メカニズムの主導により予備校化し、授業だけで伝承はなくなってしまう。宗教がもし商品化すれば、「神」の売買になり根本的に冒瀆でしかない。物質があるのみで、宗教の精神に対するこだわりや、人を善へと導く道は喪失する。文化産業の主な特徴は、精神的なものに対する高度な追求である。だがどこから手を付ければよいのか。
 それはまず歴史を認識することから始められる。歴史の中にある物語を知り、感じ、それに触れ、そして共感する。更にはもっと積極的に細かいところまで正確に理解し、人々が求めている価値や気持ちを把握する。続いて文化の要素を取り入れて活用する。こうしてこそ魅力溢れる「文化創造産業」を生み出すことができるのではないか。

日式建築は、台湾の人々にとってれっきとした歴史の一部であり、伝承すべき精神的価値との媒体となっているように思いました。

(続く)

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起業、大学院での活動、在台日本人の生活等を通して色々な角度から見た台湾について、そして台湾から見た日本について、皆さんとお話していきたいと思っています。