能作に着いて玄関に入ると、名物の木型のディスプレイがあった。個性的でかつ美しい。
そしてすぐに工場見学に案内してもらった。その時に次の資料を頂いた。
能作克治さんの著書『踊る町工場』*にあるよう、砂があるので空調は使えず、中は締め切られていて寒かった。見学時には金属を溶かしてはいなかったが、夏は相当蒸し暑いことが容易に想像できた。工程は単純だが大変だと思った。
工場見学が終わるとすぐに、鋳物体験に移った。これが本格的で驚いたというか、失敗しないだろうかと小心者の僕にはかなりのプレッシャーだった。
今までやった体験といえば、陶磁器の絵付けだったり、金箔貼りだったりと、割と単純なものばかりだった。
ところがこの鋳物体験では、上記の工程の通り、
木型(これは既につくったもの貸してもらえる)→
鋳物砂(オイルサンドを使うが、きちんと自分でふるいにかける)→
造形(こちらがメイン)→鋳造(先生がやる)→型バラシ→仕上げ
と一通り流さなければならない。
先生が「たまに失敗する人もいますよ」と素敵な笑顔でおっしゃられるので、ますますプレッシャーが大きくなった。
木型と木枠を使って盃の形を造形していく作業は、結構大変である。砂が崩れないようにしっかりと固めなければ行けないが、盃の木型だけではなく、鋳造のための注ぎ口なんかもあって、まんべんなく均一にしようとするとなかなか難しい。
木型は上半分と下半分に分かれるのだが、これを外したり、また再度くっつけたりするときは、オイルサンドが崩れてこないかドキドキした。
造形が終わり型が出来て、鋳造する時も面白かった。これは先生がやってくれるのだが、鍋に入ってドロドロに溶かした錫を型に注ぎ込んでいくのである。日常生活で金属がこんなにドロドロと溶けているのを見る機会がないため、なぜか興奮してしまった。自分でやりたかったが、安全性の面から無理なのであろう。
そして錫が冷めた後に型を開ける段階まで来ると、もう祈るしか無い。
残念だけれども、僕の向かいにいた女の子は失敗してしまい、型を開けても何もなかった。また横の机で、先生から「そんな感じで人の話を聞いていないから失敗するのですよ!」と叱られて小さくなっているオジサンがいた。先生も専属でやっている訳ではなく、普段は職人さんなので人によっては厳しいのである。
型を開けると、僕の盃は一応形があった。先生にさっと磨いてもらい、自分でサンドペーパー等を使って再度念入りに磨いた。
底にきちんと名入れもした。
結構本格的なものが出来ているではないか!心の中で思わず自画自賛してしまう。今まで色々な伝統工芸の体験をしてきたが、今回の鋳物体験の難易度が一番高く、その分完成した時は本当に嬉しく、感動した!
さて、次はこれをもってお酒を飲みに行くのである。
(③へ続く)
*参考: 能作克治さん『踊る町工場』
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