2020年3月11日水曜日

セミナー『台湾の日式建築を訪ねて』 ④台湾の日式建築から学ぶべきこと


2020227日木曜日投稿「セミナー『台湾の日式建築を訪ねて』 ③日式建築の意義」 https://kabu-taiwan-kikou.blogspot.com/2020/02/blog-post_27.html から続く。)

「台湾は日本より30年進んでいる。」

渡邉先生はそうおっしゃられました。この言葉の意味は、近代建築の再生保存に関しては台湾の方が完全に先進国であり、日本は完全に遅れているとのことです。

日本では法隆寺などの本当に古いものは一生懸命保存するのですが、明治以降のものについては急に関心が薄れるようです。

理由として考えられることは、第一に日本の法制度上日本では古い住宅はすぐに資産価値が無くなり(60年で資産価値がゼロになる)、かつ住宅ローン等により新築が優遇されていること。

第二に、専門家が不在であること。日本の一級建築士の97%は新築の専門家であり、保存再生の専門家は3%に満たないとのことです。

そして、最後に市民の古いものへの思いや意識のレベルが随分異なるとのことです。

最後の例については、例えば東京の原宿駅と台東の関山駅(旧里壠駅)を挙げていらっしゃいます。

消防法等の関係もあるのでしょうが、東京で最古の木造駅舎である原宿駅は2020年に解体されることが既に決まっています。前回のお話に出た基隆高級中学の盧先生のように、強烈に保存を訴え、行動を起こす人もいないように見えます。

一方で関山駅の旧駅舎というのは、1919年(大正8年)に台東製糖株式会社が建造され、新規駅舎がつくられる1980年(昭和55年)まで現役で使用されました。その後台東県の文化財に指定され修繕修復が行われ、更には自転車メーカージャイアントのサイクリングステーションとして生まれ変わっています。

関山駅旧駅舎

個人的には一番の差は、やはり市民の気持ち、意識レベル、そして建築物に対する考え方だと思います。

台湾には明清朝あるいはそれ前の建築物はほぼないため、古い歴史的建築物というと日式建築になってしまい、一方で日本では歴史的建造物と言えば、江戸以前のものも少なくないという事実は確かにあります。

それでも日本は明治から敗戦までの昭和初期の歴史についてどこか抹殺とまでは言わなくとも、目をそむけようとしていると言えば、私の考え過ぎでしょうか。

これに反して、台湾の人たちは日本統治時代の良かったこと悪かったことを含め、真正面から受け止めようとしているように思います。

その中で、日式建築はれっきとした歴史の一部であり、伝承すべき精神的価値との重要な媒体となっており、守っていかなければならないという市民の意識が非常に強い様です。

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起業、大学院での活動、在台日本人の生活等を通して色々な角度から見た台湾について、そして台湾から見た日本について、皆さんとお話していきたいと思っています。