蔡英文総統は1月14日に英国BBCの単独インタビューに応じ、台湾総統府はその内容(全文)をリリースしています。
總統接受「英國廣播公司」(BBC)專訪內容
以下はその拙訳です。日本語がこなれていない箇所が多々ありますが、諒としていただければと思います。
なお記事内の写真は、上記ウェブサイトより取得しています。
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BBC: スケジュールと現実的な課題はさておき、あなたは台湾の正式な独立に対して賛成ですか。
蔡英文: 現実と現状は、我々は機能上既に独立した国家であり、自分たちの政府と総統選挙制度をもっています。このことは我々が主権を擁していると確固として説明できる一つの根拠であり、我々の人民は自分たちのリーダーを自分で選ぶことが出来ます。実質的に我々はすでに一つの国家です。
BBC: いつの日か、主権国家として台湾が存在しているという事実を、明確に台湾という名称で呼び、正式に独立を宣言するというやり方で伝える必要はないでしょうか。
蔡英文: 我々は自分たちが主権国家であることを再度宣言する必要性はありません。なぜなら我々は既に独立した国家だからです。我々は自分たちのことを中華民国台湾と呼んでおり、我々は自分たちを統治する国家的システムをもっており、我々には政府があり軍隊があり、まさにあなたが総統選挙をご覧になったように選挙制度があります。
BBC: あなたの大勝利について中国が重要な役割を演じていると大多数の方が考えているようですが、中国が選挙民の投票において重要な要素となったのでしょうか。
蔡英文: 私は今回の選挙は中国だけに関係しているわけではなく、数々の国内の課題、更には価値の選択に関連していると考えています。勿論、今回の選挙において中国は重要な役割を果たしましたが、しかし最終的には、総統と総統と戦う候補者は自らがこの民主国家を統治する能力があり、経済を発展させる能力があり、我々の経済を更に競争力をつけることができることを示さなければなりませんでした。更に総統候補者はここにいる一人ひとりの世話をし、台湾における平等を確保するという能力があるということを証明しなければなりませんでした。したがって、人民は次の総統に対する期待は非常に多く、候補者は政策を打ち出し、人民たちにこの候補者がこれからの四年間、自分たちのリーダーとして相応しいと感じさせなければなりません。勿論、人民は総統が確実に中国問題をうまく処理し、我々が自らのアイデンティティと自らの主権を保持し続け、世界からの尊重を得ることを望んでいます。同時に、総統は中国との関係を処理する能力があり、その関係を安定化させなければなりません。
BBC: これまでは中国からの威嚇は常に包み隠されたものであったと考えている人がいますが、なぜ今回はどんどんあからさまなものとなってきたのでしょうか。
蔡英文: 過去三年強、中国からの威嚇はますます厳重になってきています。軍事演習や艦艇及び軍用機の台湾近辺の航海及び飛行を含め、彼らはさまざまな行動をとり、過去にも増してやり方が酷くなってきており、威嚇の程度も日に日に増してきています。更に香港で起きている出来事があり、この脅威が現実であり、かつ益々酷くなっていることを人民は身を切られるような思いで感じているのです。
BBC: 馬英九前台湾総統は民主主義を維持すると同時に、この島の地位を曖昧にし続けるという代価を払うという方法で、経済と文化において中国と密接な関係を保ちました。この方法はよくないのでしょうか。
蔡英文: 情勢は既に変わりました。曖昧ではもはやなんの効果も得られません。我々は現在かなり異なる情勢に帳面しています。前政権が用いた両岸の曖昧な条件はもはや存在しません。人民の期待、国際政治の変化、そして潜在的な地域の緊張関係等、情勢の変化を我々は考慮しなければなりません。両岸関係は既に我々相互の両岸関係ではなく、地域情勢の一環なのです。現在の情勢は過去に比べずっと複雑です。
BBC: あなたの党も中国の介入の危険性について議論してきていますね。今回あなたが爆発的な勝利を得たのも、上述のような状況が非常に大きくなってきていることのあらわれではないでしょうか。
蔡英文: わたくしとしては爆発的な勝利とは言いませんが、納得がいく勝利と言えると思います。我々は前回の地方選挙から色々と学びました。前回は多くのフェイクニュースや悪意ある噂話が流され、その他台湾人の知覚と判断に影響を与える多くの行為があり、その結果あの選挙において、我々は重大な敗北と挫折を味わいました。
BBC: ということは、それらはすべて中国から来ているとお考えですか。
蔡英文: はい、大部分がそうであると考えています。したがって選挙後我々は全てを見直し、政府が状況を明確化するための対応能力を強化する制度を打ち出し、数多くの法律を修正し、フェイクニュースをつくったり広めたりした人の責任が問われるようにしました。
BBC: このようなやり方は言論の自由に反すると考える評論家もいるようですが。
蔡英文: その通りです。ですからこそ、私達は慎重にバランスを保ちつつ、一方で人民に噂話やデマを流さないように念を押しつつ、同時に自由なる国民が言論の自由を享受できるようにしています。
BBC: 台湾の地位を曖昧にして妥協する過去のやり方では、両岸が共に繁栄していくことができないとあなたはお考えですか。
蔡英文: 現在の情勢はかなり異なっているため、双方が未来に向けて厳粛に考え、共に共存の方法を探り、台湾海峡の平和と安定を維持する必要があります。
BBC: 中国からの圧力は日増しに強くなっていると仰られていますが、現時点で戦争に至るリスクをどのようにお考えでしょうか。
蔡英文: いかなる時でも戦争の可能性というものは排除することはできません。しかし、自国の防衛力を発展させ、きちんと準備することは必須です。更に軍備以外により重要なことは、国際的な支持を得なければなりません。したがって我々は挑戦的な態度をとることはしません。我々は対岸に対し挑戦的な態度をとることにより情勢の悪化を招く、あるいは対岸がやりたいことをするための言い訳を与えたくはありません。ですので、我々は挑戦的ではなく、対岸の挑戦的な行為に対する我々の反応は、まだまだ柔和なものであると考えています。
BBC: 台湾の防衛準備は整っていますか。軍事行動に台湾は耐えられるのでしょうか。
蔡英文: 我々は防衛能力強化のために大変な努力をしており、実際のところかなり良い能力を持っていると考えています。中国にとって言えば、台湾侵略あるいは台湾侵略の試みは非常に大きな代価を支払うことになるでしょう。
BBC: 最悪の事態が発生した場合、米国が助けに来るという自信はおありですか。
蔡英文: 我々はもともと地域の友人たちとともに協力し、地域の平和と安定を維持するべきであり、したがって、我々は友人たちとともに努力を続け、地域の平和と安定を維持したいと考えています。
BBC: あなたのこのような立場から、中国の影響から抜け出し、米国と同盟関係を樹立、並びに米台関係を強化することになりますが、メリットは何かと問う人もいます。依然として米国と台湾間にて自由貿易協定を締結するようなロードマップは示されていませんし、一方で中国はあなたの立場に対してペナルティを課し、これにより台湾と中国の経済関係は損害を受け、結果として経済的に深い損害を受けてしまうということになりませんか。
蔡英文: 常に変わりゆく情勢の中、リスクは常に存在し、チャレンジとチャンスも存在します。現時点において我々は情勢の変化にうまく適応しており、これを活用することによって利益を得ています。情勢の変化のお蔭で、実際には我々が多くのチャンスを得ています。
例えば、米中貿易紛争により多くの中国への投資が台湾に戻り、我々も彼らに戻ってくるように奨励しています。
彼らは戻ってきて先進的かつ高度な製造拠点を設立し、我々の経済成長の次のステップや台湾のサプライチェーンやバリューチェーンのための推進力となり、我々はこの機会を利用し、利益効果を最大化したいと考えています。この動きに從って中国から資金も戻ってきており、我々の経済見通しは一般的な予測より更に良好になっています。
BBC: 選挙でのあなたの勝利について少々お話したいと思います。中国からの直接の戦略的な挑発というより、とりわけ若い世代のアイデンティティの問題のように、台湾が既に変化したことがより重要な勝因であると考える人もいるようですが。
蔡英文: 若い世代では既に自分たちのアイデンティティがあり、既にそれが定着していると思います。我々自身は一つの国家ですし、この認識に反する事が何ら発生すれば、「我々は受け入れられない」と彼らは立ち上がって言うと思います。彼らは香港の情勢を目にし、中国からの脅威は現実でありかつ深刻で、自分たちが感じていることを立ち上がって伝えなければならず、自分たちの考えを表現するための最も良い方法は投票に行くことであると考えたのです。
BBC: 「一国二制度」というモデルにおいて、香港はまさに自由の侵害に遭遇しているとお考えでしょうか。
蔡英文: はい、私はそのように考えております。かつて過去の一時期にはこちらの人々は香港人民を非常に羨ましく思っていました。というのも彼らは英国の統治の下、多くの自由を享受していたからです。しかし1997年以降、その事情は大きく変わりました。例えば、我々がみな目にしたのは、香港で抗議活動を行っている人民に対し最近警察がとった行動です。それは見るに耐えるものでなく、このような警察は社会にあってはならない。人民は心からこのように考えています。
BBC: 中国政府が選挙でのあなたの勝利に対し、どのような反応を見せることを期待されていますか。
蔡英文: 選挙の結果が表す人民の期待を彼らは真摯に考えるべきです。これは、常に脅されることは好まず、常に抑圧されることもまた好まないという、台湾人民が発する強力なシグナルです。生活の至る分野において成功しておりことを我々は誇りに思い、我々には成功した民主主義と輝かしい経済があり、我々は中国が尊重するに値しています。したがって、台湾の人民が選挙を通して伝えたい思いは何かを、中国は真摯に考えるべきであると私は思います。
BBC: 選挙後にあなたは対話の再開を希望していると仰られました。どのように始められますか。対話再開のために、中国政府に何を提供できるとお考えですか。
蔡英文: 中国は落ち着いて思考し、現実に直面する準備をするべきであると思います。これが重要です。中国が現実に直面しようとする準備が出来ていなければ、我々が何を提案しても、彼らを満足することは出来ません。
BBC: 台湾は目下15の国家と国交があります。この数字を維持できると思いますか。
蔡英文: 中国が台湾の国交に対し破壊の手を止めることは、絶対にないでしょう。我々は正式国交をもつ友好国をつなぎとめるために出来るだけの努力をします。
BBC: あなたが誠意を見せないから、中国がこのような行動に出ると批判する人もいるようですが。
蔡英文: 信頼を確立するために私の確認メッセージは必要なことです。かつ、私は3年強の総統就任期間、中国との関係処理においては理性的であり、挑戦的であると相手にとられる行為は一切避け、我々は現状を維持しています。多くの方々が我々はもっと色々なアクションをとっていくべきであると考えていますが、しかし過去3年余り、我々の現状維持の政策は変わっていないと中国に常に言い続けています。これは我々の中国に対する善意です。
BBC: ジェンダー問題に対し責任があるとお考えでしょうか。同性婚を認める法案を可決し、また過去を振り返って見ると、これが最大の達成であるとお考えになられてますか。
蔡英文: いいえ。国家にとって有益であると人民が最終的に理解してくれることを私はたくさんやったと思います。例えば年金改革です。勿論そのプロセスには大きな痛みを伴いますが、しかしながら最終的には、我々の公務員には年金制度があり、退職金の受け取りが確保され、破産を心配する必要もありません。同性婚については、当初意見が大きく分かれました。しかしながら我々は大変なプロセスを通じて、これを完成させました。司法への信頼感を高めるため、我々は司法改革のために多くのことを行いました。しかし、これは大きなチャレンジです。まだまだ多くの時間を必要としています。でも既に進行中です。我々の速度が十分なものであり、二度目の任期期間が終わる前に具体的な結果を出せると思います。他にグリーンエネルギーも我々は非常に重視しています。海上風力発電の計画があります。これによりエネルギー供給がよりクリーンなものになります。風力発電関連産業を立ち上げ、アジアで初めてこのような能力をもつ国家になろうとしています。事実上、我々がやっていることは台湾の政治家が伝統的にはやらないようなことです。伝統的にはやらないことですが、我々はやっています。
BBC: これから四年間のビジョンをお聞かせ下さい。
蔡英文: 私は台湾をより民主的で、経済的には競争力を備え、世界でも主要な経済の担い手としたいと思っています。革新価値(Progressive Values)ということについても、我々は多くのことに取り組みました。これは最終的に台湾をしてアジアで最も進歩した国家とならしめるためです。
BBC: 死刑廃止についてはどうお考えですか。
蔡英文: 非常に難しい問題です。
BBC: あなたはどちらを支持されますか。
蔡英文: これは人類が常に達成したい目標かもしれませんが、問題はここでは大多数の人が支持しません。人民の思考様式が変わるためには、長いプロセスと時間を要します。実際には、民主主義社会においては、人民がその考え方を受け入れることが出来て、初めて行動をとることが出来ます。人民が十分な自信をつけ、安心感を得るまでは、十分な支持を取り付け、行動を起こすのは難しいと思います。
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