2010年5月4日火曜日

台湾映画『一八九五』



サイエンスパークで有名な新竹を少し南下したところに、苗栗という県があります。

カブ家と15年以上のつきあいのある林家がこの苗栗県にあるため、ちょくちょく遊びに行きます。

海側ではのどかな田園が広がり、山側ではイチゴや柑橘類などの果樹園があり、豊かな自然に恵まれた苗栗は台北とはかなり違った魅力に溢れています。

苗栗の住民の多くは客家(ハッカ)の人たちですが、司馬さんの『台湾紀行』に『客家(ハッカ)の人たち』という章があるので、一部を引用してみます。

・・・客家とは、本来“よそ者”という意味である。大陸や台湾、あるいは世界の各地に住みつつ、客家語とその文化を共有することで同族であることを認識している。

・・・客家のひとたちは、南宋の末期の忠臣としてモンゴル軍(元帝国)に抵抗しぬいた文天祥も客家だったという。

・・・清末の大乱である太平天国ノ乱の総帥の読書人洪秀全も客家だった。

・・・近代では、辛亥革命の父といわれた孫文も客家で、また毛沢東とともに中国革命をおこした朱徳も客家であり、それらの後継者になった鄧小平氏もそうである。

そして、シンガポールのリー・クワン・ユー、台湾の李登輝も客家であると台湾紀行は続けます。

おこがましくも私が追加するならば、李登輝の次の総統だった陳水扁もやはり客家ですし、国民党の前党主席である呉伯雄、民進党の現党首である蔡英文もそうで、枚挙に遑がないとはまさにこのことです。

2008年11月に公開された台湾映画、『一八九五~ The Legend of Formosa in 1895』をDVDで見ました。

『一八九五』は1895年(明治28年)の苗栗を主な舞台としていて、主人公である呉湯興も客家の人です。

1895年5月23日に清朝の台湾巡撫である唐景崧は台湾民主国を結成し、呉湯興に苗栗での義勇軍結成を命じます。

しかし、当の唐景崧は6月2日に逃亡してしまいます。

呉湯興は台湾民主国から裏切られ、一族からは大きな反対に合い、また抵抗運動中に失われる数々の命に面しつつ、心の中で大きな葛藤に苦しみながらも自らの故郷を守るべく、自らが結成した客家義勇軍を率いて抵抗活動を続けます。

一方で、日本人にも大きくスポットライトが当てられます。

同じく1985年5月、北白川能久親王率いる近衛師団が台湾に上陸します。

ここには軍医である森鴎外もいて、彼の語りを通じて台湾接収の歴史が綴られていきます。

能久親王と森鴎外もまた、抵抗を抑えて無事台湾を接収するためとはいえ、既に自国領である台湾の人たちを殺戮しなければならないし、慣れない土地にてマラリア等で命を奪われていく多くの仲間を見送りつつ、彼らもまた心の中で葛藤に苦しみながら、台湾全土接収のために軍を南に進めていくのです。

能久親王自身が台湾全土平定直前の10月28日にマラリアでなくなるところでこの映画の物語は終わり、「この接収のプロセスで亡くなった台湾の人たちは1万2千人、その後台湾は50年間にわたる日本統治時代を迎える」というプロットが流れて映画全体が終わります。

映画からも垣間見ることができますが、日本軍の損失も大きく、ある資料によると7万6千人の部隊のうち、7千人が戦闘で死に、5千人がマラリヤや赤痢にかかって病死したとされています。

この映画は、淡々としたストーリーで客観的に当時の歴史物語を展開していきます。

そこには直接的な強烈なメッセージは余り感じられません。

しかし、当時の台湾人と日本人の愛国心がひしひしと伝わってきます。

大きな葛藤の中、呉湯興は自分の故郷を守るために、能久親王は自国の最南端の領土を平定のためにそれぞれ尽力します。

仮に愛国心がなければ、呉湯興はこの映画に描かれるような、何もリソースがない中での抵抗運動を続ける必要はないし、能久親王はマラリアに苦しみながらも平定のために尽力を尽くす必要もなかったはずです。

戦後の台湾でも日本でも、経済や国民の生活が最優先で、愛国心はどうやら過去の遺物になってしまったようです。

そんなことについて、この映画は何も言っていません。

ただ無言でそんな状況について、再考を迫っているように感じられます。

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2 件のコメント:

  1. 偶然ですね、、、昨日、森鴎外のお墓に行ってきました。三鷹の禅林寺にあります(太宰治の墓の斜め向かい)。

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  2. 確かに偶然ですね。。。

    この映画を観るまで、私は森鴎外さんが台湾に来ていたことすら知りませんでした。(この映画の参考文献に森鴎外全集第35巻が挙げられていました。読んでみたいと思います。)

    更に森鴎外さんが三鷹でお休みになられていることも知りませんでした。

    勉強不足です。。。

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本ブログの概要

起業、大学院での活動、在台日本人の生活等を通して色々な角度から見た台湾について、そして台湾から見た日本について、皆さんとお話していきたいと思っています。