2010年5月17日月曜日

また八田祭から




八田祭をきっかけに、長い間見よう見ようと思って見ていなかった、八田與一さんを主人公とした連続テレビドラマ『水色嘉南』のDVDを見ました。

『水色嘉南』は全20回、約860分にわたる大作で、DVDも5枚あります。

かつて国外において、このような大作の連続ドラマで主人公となった日本人は、台湾における八田與一さん以外は考えられないのではないでしょうか。

内容についてですが、八田與一さんが奥さんの外代樹さんとお見前の前に出逢っていて、外代樹さんが八田與一さんに一目惚れしてしまうというロマンチックな部分、八田與一さんの原住民の助手のあだ名が『あいうえお』という少々台湾風オヤジギャグを感じさせるユーモア、台北の料亭でもうこれでもかというほど派手な芸者さん(和服を着ているのですが、すべてキラキラの原色)の登場等、ホームドラマ用に脚色したと思われる部分もあります。

連ドラですから、少々のことはまあ仕方がないですよね。

しかし、『水色嘉南』では八田與一さんの台湾における人生を克明に描いていて、その詳細度は司馬遼太郎さんの台湾紀行の記述を軽く上回るもので(台湾紀行では八田與一さんについて2章も割いています)、かつ台湾人の作風らしく、非常にリアリティ溢れる描写となっています。

烏山頭ダムという当時東洋最大のダム建設の過程において、

台湾人住民に対する説得

台湾人と日本人間で絶え間なく発生する不信感の解消と信頼関係の構築

当時最大規模のダム建設についての技術的対応

国会の承認と予算の獲得

家族の苦悩(八田さんが総督府技師から民間の技師となる決断等)

利害関係の不一致による台湾製糖会社からの妨害

ダム建設中の爆発事故の処理

日本から派遣されてきたアメリカ人専門家の監査への対応

マラリア等の風土病との戦い

関東大震災による予算削減のためのリストラ

等々数々の困難とチャレンジに対して八田與一さんと当時のチームの方々が一歩一歩解決していきます。

私がやってきているプロジェクトと八田さんのプロジェクトは規模が違いすぎて、比較するのはおこがましいのですが、これらのチャレンジは、現代の日本人の我々が多国籍のプロジェクトを行う際に発生するものと非常に似ていて、非常にドキドキしながら物語の展開を見つめました。

そして、これらのチャレンジの中で一貫して描かれているのは、八田與一さんの台湾人、日本人の両者に対して極めてフェアな態度であり、嘉南平野の農民の幸せになれるように一途なまでの努力と献身、英語でいうコミットメントです。

このような資質や人柄の大切さも、現代にそのまま通じると思います。

更に、八田與一さんはダム建設に成功された後にも台湾に滞在し、土木技術者を要請する学校を開かれます。やりっ放しではなく、フォローアップにも抜かりなしですね。

私の心の中で、改めて彼は郷土の大先輩で、大ヒーローとなりました。

もっと言えば、八田さんは我々現代の日本人がお手本(英語でいうロールモデル)とするべき人だと思いました。

追記:

この『水色嘉南』は客家電視台で何度も再放送していますので、台湾に住まれている方はテレビで見る機会があります(http://www.hakkatv.org.tw/south/index.html)。

また、DVDは中華電視台のウェブサイトで購買可能です(http://www.ctsmall.com.tw/default.aspx?ch=EmallDetail&menu_id=Catalog&Catalog=a&bgcolor=FDD5D2&PID=106108)。

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2 件のコメント:

  1. 日本の国会議員の中に、八田與一さんのことを知っている人は何人くらいいるのでしょうかね?

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  2. 日本の国会議員全員に白紙を渡し、「八田與一さんについて、知っていることをまとめて下さい」という問題を出してみる。

    もし成績が悪ければ、「すみません、このような方々に我々の政治を任せるわけにはいきません。北陸の政治は自分たちでやらせて下さい。」と北陸は日本という国から距離をおいてみる。

    こんなことを考えてしまいました。。。(これは白日夢に近いのでしょうかね。。。)

    衆参両議員722人のうち、一割の70人ちょっとの人が八田與一に知っていれば良い結果であるというのが、今の日本の現実ではないでしょうか。

    これはあくまでも私自身の個人的感覚ですが、如何でしょうか。

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本ブログの概要

起業、大学院での活動、在台日本人の生活等を通して色々な角度から見た台湾について、そして台湾から見た日本について、皆さんとお話していきたいと思っています。